ご案内
「ソリューション事業会社群」「出版広告事業会社群」「商事事業会社群」「独立事業会社群」などが存在するが、これらすべての事業会社群は、事業持ち株(JTB(旅行)がグループの中心) (事業会社各社は並列・平等)中核となる「株式会社ジェイティービー」は、本業の旅行事業を分割して一五社に営業譲渡し、売上高に応じたロイヤリティーを収受するかたちで求心力を堅持する。
ちなみに連結決算は、既存のグループ関連会社一五六社(国内九三社、海外六三社)に、持分法適用の法人一六社を加えた、トータル一七二社が対象となっている。
卜も大きい。
分社による意思決定の短縮化と一雇用の創出風通しのよい職場環境の具現化会社の下で並列・平等に位置づけられ、新生JTBグループを形成する。
九七年独禁法が改正されて以降、国内企業の多くは会計基準のグローバル化などを理由に、ホールディング化への移行を相次いで発表した。
持ち株会社化した場合、特定の事業がもたらす利益にとらわれることなく戦略的に本社機能を構築できる。
新規事業の立ち上げやM&A(企業の合併・買収)がしやすくなるほか、より柔軟な人事制度を導入できるようになるなど、メリッホールディング化以前のJTBは大所帯だった。
肥大化しすぎたために「大企業病」に蝕まれ、社員一人ひとりの知恵や工夫が活かされないビジネス環境にあったことは否めない。
いちばんの問題は、意思決定が遅くなることだった。
社内菓議に手間取り、競合に後れをとることもしばしばで、時代のスピードに即応できない状況にあった。
「地域別旅行事業会社群」の社員数は、「JTB首都圏」が約三○○○人、「JTB西日本」が約一四五○人、「JTB中部」が約九五○人、「JTB九州」が約九四○人で分社独立のスタートを切った。
また、「機能別旅行事業会社群」は、おおむね一七○〜二○○人体制である。
いずれも自立した企業として、独立採算で事業計画も立てやすく、決裁権者も明確だ。
風通しのよい職場環境が整ったことで、「とりわけ若年層社員にとって、やりがいを見出しやすい環境をつくることができた」と人事担当者はいう。
一方、「人が財産の会社で、なぜ社員が満たされないのか」「なぜ離職するのか」を追究したとき、人事ポリシーである「入社後に培った能力を活かしきれる舞台」を、十分に与えきれていないのではないかという想いがあったという。
ホールディング化で、より柔軟な人事制度を導入できるというメリットを活かして、人材を各社間で活発に交流させるために、新生JTBでは「フリーエージェント制」に似た制度などを導入した。
グループ内他社の公募にチャレンジできるようにするもので、JTBグループの分社化と地方分権で新たな雇用を創出さまざまなところで格差が大きな問題となっているが、賃金の格差問題は地域差によるところが大きく、人事考課上でも慎重を期する課題だった。
しかし、分社化したことで制度を多様化することができ、格差問題の解消にも一役買うかたちとなった。
人件費の低い「地方」の会社で採用された場合、都市型の会社に比べ賃金体系に差がでる。
「地域別事業会社」として地域による分割をしたことで、収益性の乏しい地方を切り離したのではないかといも言われたが、地方には親元から通いたいという人も多く、それなりに功を奏している。
新卒の志望者の七割が女子学生というから、「地域別事業会社」を選択することに大きな抵抗はなかったようだし、ベテラン社員にとっても全国規模の転勤がないことで、就学児や老親など扶養家族を抱えている社員に支持された。
社員のライフスタイルが変化し、仕事に対する考え方にも個人差が顕著に表れるようになっているのだ。
地方だからといって、労働条件を大幅に変更したり、特定の社員に不利益が及んだりしないよう、各組合支部と合意点を見出しながら分社をしたが、顧客や地元行政の側からすれば、企業が地元に来てくれることは喜ばしいこととして歓迎された。
また、地域社会への貢献、交流促進、観光資源の活用、地場産業とのパートナーシップ強化など、地域密着型の営業によって得られる信頼も大きい。
団塊世代の大量定年や景気回復による人手不足が懸念される今日、雇用の革新は社会的な問題としてクローズアップされている。
厚生労働省の推計によれば、活用可能な働き手の総数を示す日本の労働力人口は、ニ五六七万人(○六年)にものぼる。
育児中の女性や高齢者などを活用することで、五五○万人程度の労働力を確保できるというから、今後はそうした人材の登用にも期待がもてる。
なぜなら、そうした働き手の多くは、転勤を伴う正規雇用に応じたくても応じられない状況下にあることが多いからだ。
「創業以来の非常事態に際して」というタイトルの緊急プレジデントメッセージが全社員に発せられたのは、○三年一○月一日のことで、それから、ちょうど一年が経過していた。
ニューョーク同時多発テロが発生して以降、相次ぐ逆風に苛まれた旅行業界の災禍は、業界トップのJTBにも大きな影を落としていた。
しかも、インターネットの普及で、業界地図は見る見るうちに塗り替えられていく。
冷え込んだ海外旅行市場の代替目的地として活況を呈しはじめた国内旅行市場ですら、ネット予約専門の新興業者に牙城を崩されつつあった。
国内最大の店舗数を誇り、戦後の日本経済史において名実ともにナンバーワンの旅行会社となったJTBを取り巻くビジネス環境も、わずか数年で驚くほどに変化し、現場の社員にも焦燥の色が見えはじめていた。
緊張するリーダーたちを目の前にして、S・株式会社ジェィティービー代表取締役社長が切り出したのは、一強といわれた「JTB」を解体して、○六年四月には持株会社化をするというものであった。
これは、「過去」への、強い訣別表明にもとれた。
「これからは未来の話を。
今日からは、明日の話に集中しようではないか」と力強く語るS氏の表情には、創業以来の危機を乗り越えようとする覚悟と、堅固な姿勢がにじんでいた。
過去の成功体験に酔いしれ、変わる勇気を持てないもどかしさが、現場に大きな「閉塞感」をもたらしているのではないか。
S氏は後も、この「閉塞感」という言葉を多用している。
現場に戻って、実際にリストラの指揮をふるう出席の管理職に背負わされた十字架は、もっと重いものだ。
そしてJTBは、○三年と○四年のニ年間で、約一五○億円のリストラクチャリングを敢行することになる。
「非常事態宣言」ののち創業以来九十余年の歴史の中で、何度か直面した窮地も、持ち前の「JTBらしさ」でくぐり抜けてきたが、○三年上期(四〜九月)は、かつて経験したことがないほどの悲惨な状況に「平和産業」といわれる旅行業において、テロや戦争が業績のマイナス要因になることは当然だ。
感染症SARSの発生やその後の風評被害が重なった○三年であった。
その一○月にS氏が発した「創業以来、最悪の水準である」というメッセージに、社員たちはどれだけ切羽詰まったものを感じ取ったのだろうか。
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